めまいについて
めまいやふらつきの原因として、脳梗塞などの危険な疾患が含まれることがありますが、その頻度は高くありません。当院では脳血管障害が疑われる場合、速やかに高次救急病院を紹介させていただきます。一方で、耳鼻咽喉科で診療を行う代表的なめまいには以下のようなものがあります。
耳鼻咽喉科で扱う主なめまいの種類は以下の通りです。
- 良性発作性頭位めまい症(BPPV)
- メニエール病
- 前庭神経炎
- 前庭性片頭痛
- PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)
- 心因性めまい
- 起立性低血圧
良性発作性頭位めまい症(BPPV):頭を動かした瞬間の激しいめまい
良性発作性頭位めまい症は、頭の位置を変えたときに数秒から1分以内の強い回転性めまいが起こる病気です。寝返りを打ったときや、起き上がったとき、あるいは上を向いた瞬間などに症状が現れます。これは、内耳にある耳石というカルシウムの結晶が本来の場所から剥がれ、三半規管に入り込むことで、脳が「動いている」と誤認するために起こります。
良性発作性頭位めまい症の主な症状
| 回転性めまい | 自分や周囲がぐるぐる回るような感覚が特徴です。 |
|---|---|
| 持続時間 | 通常は 10秒から60秒以内 におさまりますが、動くたびに繰り返します。 |
| 随伴症状 | 吐き気や嘔吐を伴うことがありますが、難聴や耳鳴りは伴いません。 |
めまいが起こる原因とメカニズム
耳石は本来、内耳の前庭という場所にあります。これが剥がれて三半規管の中を動き回ることで、神経を刺激しめまいを誘発します。耳石が動きを止めればめまいもおさまりますが、管内から耳石がなくなるまでは症状が繰り返されます。剥がれる要因としては、加齢や頭部への衝撃、長期間寝たままの生活などが挙げられます。なお、メニエール病などの他の病気に続いて起こる場合は二次性と呼ばれ、治療が長引く傾向があります。
診断までのステップ
-
問診と全身状態の確認
まずは詳しい症状を伺い、脳梗塞など他の重大な病気の可能性がないか慎重に診察します。 -
聴力検査
メニエール病など、他の内耳疾患との識別を行うために実施します。 -
眼振検査
赤外線CCDカメラを用い、頭を動かした際の目の揺れ(眼振)を確認して、どの半規管に問題があるかを特定します。
治療方法について
浮遊耳石置換法
最も効果的な治療法です。頭を特定の順序で動かすことで、三半規管に入り込んだ耳石を元の場所(卵形嚢)へ戻します。エプリー法やセモン法など、症状のタイプに合わせた手法を用います。一度で改善しない場合もありますが、繰り返すことで高い効果が期待できます。
薬物療法
激しいめまいや吐き気がある場合には、それらを和らげるためのお薬を処方します。
予後と再発防止のポイント
多くの場合、数週間から数か月で自然に改善します。高齢者の方は転倒のリスクがあるため、早めの受診が大切です。症状が落ち着いてきたら、再発予防として前庭リハビリテーションを積極的に行うのが早期回復のコツです。もし、回転するめまいが消えた後もふらつきが続く場合は、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)へ移行している可能性があるため、診察時にご相談ください。
メニエール病:耳鳴りや難聴を伴う繰り返すめまい
メニエール病は、内耳に内リンパ液が過剰に溜まる「内リンパ水腫」によって、めまい・難聴・耳鳴りを繰り返す病気です。
メニエール病の症状
| めまい発作 | 激しい回転性めまいが 8時間から半日程度 持続するのが典型的です。 |
|---|---|
| 聞こえの症状 | 発作に合わせて耳の詰まった感じ(耳閉感)や難聴、耳鳴りが起こります。 |
| 発作の間隔 | 症状は繰り返すのが特徴で、発作がない時期は無症状の人もいれば、ふらつきが残る人もいます。 |
発症の原因とメカニズム
内リンパ液が溜まる原因には、ストレス、睡眠不足、気圧の変化(低気圧)、女性の場合は生理などが関与しています。これらによって放出されるストレスホルモン(抗利尿ホルモン)が内耳に作用し、水ぶくれのような状態(内リンパ水腫)を引き起こすと考えられています。
診断のための検査
| 聴力検査 | 低音域の聞こえが低下し、改善と悪化を繰り返すのが特徴です。 |
|---|---|
| 眼振検査 | 発作時に赤外線カメラで観察すると、特有の目の動き(水平回旋性眼振)が見られます。 |
| MRI検査 | 確定診断には内耳のMRIが有用です。精密な検査が必要な場合は、対応可能な医療機関をご紹介します。 |
治療と日常生活のアドバイス
発作が起きている時は安静が第一です。必要に応じて鎮静剤の点滴や、ステロイド、利尿剤、循環改善剤などの内服治療を行います。慢性期には五苓散などの漢方薬が有効な場合もあります。また、メニエール病は日常生活の改善が非常に重要です。ストレスを上手に避け、十分な休息を心がけることが再発予防につながります。
経過と予後について
繰り返し発作が起きても、めまい自体は徐々に落ち着いていくことが多いですが、難聴は反復するたびに回復が難しくなる傾向があります。また、メニエール病の方は二次的に「良性発作性頭位めまい症」を併発しやすいため注意が必要です。症状が変化し、立っている時のふらつきや動くものを見た時のめまいが続く場合は、リハビリテーションが必要なPPPDへの移行が疑われます。気になる症状があればいつでもご相談ください。
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは?
「耳鼻科や脳外科で『検査に異常はない』と言われたのに、フワフワ感が消えない」
「めまいが数ヶ月も続いていて不安……」
このような慢性的なめまいの背景にある病気として、近年注目されているのがPPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)です。
なぜPPPDでめまいが続くのか?(3つの感覚のバランス崩壊)
人間は普段、以下の3つの感覚を脳で正しく統合することで、無意識に体のバランス(平衡感覚)を保っています。
| 前庭感覚(耳) | 頭の動きや傾き、加速を感じる |
|---|---|
| 視覚(目) | 周囲の景色や動く物体を見る |
| 固有知覚(体) | 足の裏の感覚や関節の位置、筋肉の張りを感じる |
過去に起きた突発的なめまい(良性発作性頭位めまい症や前庭神経炎など)や強いストレスをきっかけに、この3つの感覚の統合バランスが崩れてしまうのがPPPDの大きな特徴です。
耳が悪くなると、耳からの情報がうまく使えなくなった結果、「視覚情報(目)」や「体の緊張」に過剰に依存するようになり、脳が常に「揺れている」「倒れそう」と誤作動を起こして過敏状態に陥ってしまいます。平衡感覚が視覚に依存すると「動くものをみるとめまいがする。」「スーパーの陳列棚を見てるとめまいがする。」ようになります。
主な症状と診断(新潟大学方式の問診票を導入)
このような症状はありませんか?
- 3ヶ月以上、浮動感(フワフワ感)や揺れ感がほぼ毎日続いている
- 体位の変化(立ち上がる、体を動かす)で悪化する
- 特定の姿勢(立っている・座っている)で悪化し、横になると楽になる
- 視覚的な刺激(ショッピングモールなどの人ごみ、スーパーの陳列棚、スマホのスクロール画面など)を見るとクラクラする
当院での診断について
PPPDは一般的な画像検査や血液検査だけでは判定が難しいため、「問診」が極めて重要になります。 当院では、まず、PPPD以外のめまいではないか一般診察、聴力検査、眼振検査などを行います。また脳のMRIなどを撮ることもあります。PPPDのきっかけとなる疾患が治っていないことも多く見られます。また、心因性めまいの合併もあるため、その問診も行くことがあります。PPPDの診断としては、めまい診療で実績のある新潟大学で開発されたPPPD専用の問診表(Niigata PPPD Questionnaire)を導入しています。生活の中でのどのような刺激で症状が強まるかを客観的に数値化・評価し、的確な診断につなげています。
当院での治療法
PPPDのきっかけとなっためまいがあれば、まずその治療を行います。
その上で、PPPDの治療は、お薬(脳の過敏を抑えるSSRIなど)の服用とあわせて、「前庭リハビリテーション」を行うことが改善のカギとなります。
前庭リハビリテーションとは?
過敏になった脳や感覚器に「この動きや景色は怖くない・危険ではない」ということを少しずつ再学習させ、バランスの統合機能をトレーニングするリハビリです。
当院では、患者様の状態に合わせて以下のようなトレーニングを段階的に指導・提案いたします。
-
注視運動(目の運動)
指先などをじっと見つめたまま、頭を左右・上下に振る練習です。耳と目の連携(前庭眼反射)を整えます。 -
脱感作トレーニング(視覚刺激への慣れ)
あえて苦手な刺激(流れる映像や模様など)を短時間見る練習をし、視覚過敏を少しずつ和らげていきます。 -
バランス運動
足を前後にして立つ、目を閉じて立つ、柔らかいマットの上で立つなど、足裏の感覚(固有知覚)を使って姿勢を保つ練習です。 -
習慣化運動
「頭を下げるとフワッとする」など、特定の苦手な動作をゆっくり繰り返し行い、脳を刺激に慣らしていきます。
院長からのメッセージ
PPPDは「もう治らないのではないか」「気持ちの問題と言われた」と一人で抱え込んでしまいがちな病気です。しかし、正しく診断を受け、リハビリやお薬でのアプローチを継続することで、しっかりと症状の改善が期待できます。
「長引くフワフワ感で困っている」という方は、諦めずにぜひ一度当院へご相談ください。
